こんにちは、のりたまくんです。
引き続きプラントエンジニアリング業界の業界分析です。
ニュースをよく見られる方や、投資に興味がある方であれば、2019年3月期に計上した千代田化工の巨額損失(約△2100億円)は記憶にあるのではないでしょうか?
このような巨額損失のリスクはこの業界では考えておかねばならないことです。
その仕組みを日揮2017年の損失(約△200億円)と千代田化工建設2019年の損失(約△2100億円)を例に解説していきます。
専業プラントエンジニアリング会社御三家の収益等の比較や、プラントエンジニアリングそのものの解説を以下の記事で行っておりますのでまだご覧になられていない方は見てみてください。
受注契約方式(EPC プロジェクト)
まず巨額損失の仕組みを知るためには、プラントエンジニアリング業界の受注契約方式を理解する必要があります。その方式は大きく以下の二通りに分かれます。
- ランプサム契約
見積時に受注金額を原則決めてしまう契約方法。免責などあるにせよ原則何が起きてもエンジニアリング会社の責任。納期遅延があれば罰則あり。 - レインバース契約
見積時に概算金額は出すものの実費精算。客先と共同で作り上げるイメージ
日本の専業プラントエンジニアリング会社は、上記のランプサム契約を得意としています。受注産業としては一般的だなと思うかもしれませんが、一プロジェクト数千億円の規模をランプサム契約するのって、相当リスクあると思いませんか?もちろん上手くいくと、巨額の益が得られます。ギャンブル感がありますよね。
日揮の例(2017年 約△200億円)
2017年3月期の当初の業績予想は純利益+250億円の予定でしたが、急遽業績予想修正が行われ純損失△170億円、最終的には△200億円で着地しました。株主からしたらたまったものじゃないですね。当時のIRを見るとアメリカでのPJからの損失のようで、受注金額は非公表ですが2000億円程度じゃないでしょうか。
なお、要点は以下の通りです。
- アメリカの建設地で2017年春から天候不順が続いた
- 建設工事労働者の生産性低下が続いた
- 上記2点より納期遅延が発生し、建設費用が大幅に増加
2点目はさておき、1点目の天候不順は日揮がコントロールできるものではありません。もちろん契約の中で災害等が起きた場合の免責事項はあるとは思いますが、日常の悪天候までは・・・きっとないんでしょうね。
それにより納期遅延が起きると、ペナルティーを支払うだけでなく、建設現地の数千人の雇用期間が延びてしまい、その給料だけでなく住居や手当など様々な補償の費用が出て行ってしまい、巨額損失が起きてしまったのだと思います。
千代田化工の例(2019年 △2100億円)
これは皆様の記憶も新しいかもしれませんが、当初千代田は+65億円の純利益を見込んでいましたが、10月末に△1100億円の純損失を発表しました。私はこれを聞いた時素直に一桁間違えた?って思いましたね。年間100億円、200億円の純利益を出す会社が、1000億の損失!? これはつぶれるぞ?って思いましたね。結果、最終着地は△2100億円の損失となりました。この原因は日揮同様アメリカのプロジェクト、キャメロンプロジェクトで、受注金額は約6000億円です。当時のIRでの要点は、
これにより、大規模の損失を計上するとの説明でした。人件費高騰は、トランプさんの政策の影響もあると想像しています。
なんだか日揮の説明に似てるようか気がしませんか?ただ、プロジェクトの規模が大きすぎたため、その損失も桁違いな結果になっています。
まとめ
- 契約はランプサム契約 (見積額で一括受注)
- 納期遅延はペナルティーだけでなくその他諸経費によりコスト増加大
- 建設現場の政治や天候により収益が左右される
このようにプラントエンジニアリング業界は巨額損失のリスクと常に隣り合わせの業界です。もちろん、各社そのリスクをどうやってコントロールするか注力しております。次回最終回は各社の取り組みについて解説できたらと思います。