中小企業診断士のりの企業診断日記

中小企業診断士としての観点で投資に役立つ企業診断を行います。

【ANA, 9202】2000億円規模の公募増資か!?株価への影響を財務諸表から読み解く

こんにちは、のりたまくんです。
先週末にANAの2000億円の公募増資がニュースになっていましたが、恥ずかしながら見落としておりました。笑
つい先日JALが最大1680億円の公募増資を発表し、株価は大幅に下落しました。その直後コロナのワクチンのニュースが流れたおかげで回復しておりますが、初日は10%超下落いたしました。(11/6 1843円 -> 11/9 1641円) 当時の記事は以下参照ください。

 

noritamashindan.com

 

ANAは公募増資を正式発表でないと言いつつも、肯定も否定もしておらず今後の動向には注目ですが、どれほどの影響があるのでしょうか。 

 


そもそも公募増資とは??

公募増資とは、会社の資金調達方法の一種で新たな株を市場に出し株主に売ることで資金を調達する方法です。企業としては、調達した資金は返済義務はなく、負債ではなく純資産として帳簿に載せることができます。

一方、これをされると既存の株主はたまったもんじゃありません。
新たな株が市場に出回る、つまり会社の価値は変わらないのに市場に流通する株が増えます。言い換えるなら、スープの素の量が変わらないのに急に水を追加されたようなものでしょうか。もう想像がつくかもしれませんが、いま皆さんが持っている株の価値が下がる(薄まる)ことになりますよね。

 

2000億円の株価への影響は?

9月末時点での決算資料を基にするとANAの純資産は約8900億円あります。これに対して2000億円の増資が行われます。つまり約22%分資本を増やそうということですね。
100%あった資本が122%に増強される、逆に言えば約18%、株の価値が希釈されることとなります。

本日11月24日の終値で、JALは+5%に対してANAは-2%となりました。つまりざっくりですが7%程度は見込まれたことになります。つまりあと10%程度は下がるかもしれませんね。

財務諸表分析

財務諸表から算出される安全性をコロナ前の2019年3月、コロナ開始の2020年3月、最新の2020年9月で並べてみましょう。

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自己資本比率とは、自社資産をどれだけ自己資本で賄えているか、つまり負債が少ないかを示す指標です。
2020年3月期から自己資本比率が大幅に低下しています。10%減少と言ったら大事です。原因は大きく二つあり、

  • 資金確保のために借入金増加
    半年間で約4000億円の長期負債が増加しています。

  • 純利益損失により利益余剰金減少
    半年間でANAは約2000億円の損失を出しています。
    (通年では更に3100億円の追加損失を計画しています。)

現在の純資産は先述のとおり8900億円です。2021年3月期の後半だけでこれから3100億円の追加損失を計画しています。
これだけみても、純資産が8900億円 - 3100億円 =5800億円になってしまいます。
今回2000億円調達できたとしても資産は減少していってしまいますし、コロナの影響は2021年3月で終わっているかというと、、、厳しそうですね。
今回の公募増資だけでは済まない可能性が大きいです。

まとめ

  • 公募増資は株の価値が希釈されます
  • 2000億円は現純資産の約18%分。それだけ株の価値が薄まる。
  • 本日11/24の市場で約8%分は見込まれたといえる。残り10%下落可能性有
  • 巨額損失の影響は今回の公募増資だけでは済まない可能性大